Son Voyage

あれもこれも、と手をのばしてクビ突っ込んで、なんだか最近書くこと増えてきたし、こっちも始めました。よもやま話の散文ばかりで見てくださる方がいたら恐縮するくらい。。。 2006年秋、旅先で書き始めたのを記念して、Son Voyage(Her Trip)~♪

2006/12/27

Missing You,,,,

淋しい出来事も、ここに留めておくことに。
今週N先生とのお別れがありました。今月満93歳になったところでした。

先生のお宅には子どもの頃祖母に連れられて何度か。子供のいない静かなお宅で独特の大人の暮らしのにおいが。奥様はお琴の先生で、とても上品な方でした。
小学校高学年になると土曜日にN先生のお稽古に伺ったこともありました。2階が広いお稽古場で、時々は座りきれずに待つこともありました。半紙を30円くらいで買って、墨すって、上手く書けた数枚をN先生に見ていただいて。ときどきは、うちの父がN先生のお手伝いをしていて、父から朱色の墨でなおされるときは少し変な気分でしたね。
その父は、少字数という大きな文字を書くコースで何年も続けていたため、時折家の冷蔵庫には墨がボトルに入って冷えていました。常温では腐るので、翌週の練習まで冷蔵保存だったみたい。電動の墨すり機なんてものも我が家には2つありました。硯の台が回転するものと、墨をつかんだアームが動くタイプのもの。

そんなふうに一族みんな少しずつ嗜んでいたわけですが、N先生は本職でしたからスケールが違います。昭和50年頃には数人の先生方と南米へ渡り、ブラジルをはじめ日系人のいる町で教えていらしたのだそうです。上野の美術館で毎年開かれる大きな展覧会の審査員も務め、5月の地元での会展には数十点にのぼるお弟子さん方の作品の中、ひときわ大きく先生の作品が飾られていたのを憶えています。父も祖母も立派に表装した作品を出品していました。

N先生は、実は祖母の弟にあたります。祖母の米寿のお祝いの機会にはN先生も同席くださり、久方ぶりに直にお話しできました。でもそれが最後の機会になってしまいました。 「習いたいこと、やりたいことがあったら、今すぐにお始めなさい。」と言ってくださったのを思い出します。

今月はじめに祖母とのお別れをしたとき、N先生は車椅子でおいでくださいました。ずっと療養中と聞いていましたが、精進落としの席でのN先生の立派なご挨拶にはいたく感動しました。おいくつになっても、例え体にご不自由があっても、N先生はやはりN先生なのでした。

それから20日も経たないうちに、、きっと向こうの世界のほうに気持ちが急いたのでしょう。90年も仲良しだった姉さんも、奥様もお待ちだったのですもん。
きっとそちらの世界でも大勢のお弟子さん方に囲まれて賑やかにお過ごしになるのでしょうね。
N先生、どうか安らかにお眠りください。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home